
仲里嘉彦の自叙伝
〔わ が 恩 師〕
小さき胸に抱きしデッカイ夢 (その596)
かつて私が沖縄を訪問した際、「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとって戦後は終わらない」と申しましたように、沖縄の施政権返還問題は、政治の最高責任者としての私にとっても最大の課題であったのであります。
私は、日米首脳会談を終わったいま、ただ感慨無量であります。
今回の沖縄返還についての日米両国の合意は、過去四半世紀にわたる日米両国の友好と信頼、理解と協力があってはじめて達成された成果であり、同時に、これは将来にわたって日米両国の協力関係が不動のものであることを実証してあますところがないと思うのであります。
さて、1972年に沖縄を日本に返還するという合意ができた以上、今後は本土、沖縄双方が相協力し、全力をあげて復帰準備に万全を期することが大切であります。
まず、沖縄の施政権を日本がゆずりうけるためには、沖縄の返還協定をはじめ、今後、日米間で話し合わねばならない数多くの問題がありますが、これらは日米の外交ルート、沖縄に関する日米協議委員会および、今後、沖縄に新設することにしている高等弁務官および日本政府代表よりなる機関を通じて解決して行くこととなることは申すまでもありません。
大切なことは、沖縄内政上の問題であります。
なんといっても25年間、米国施政下におかれてきた沖縄は、本土の県市町村と比較して制度面で大きな相違があるのみならず、内容において、その行政および住民福祉の水準に大きな格差があります。
これを近々2、3年のうちに立派な沖縄県の県づくりをし、行政および住民福祉の水準を本土並みにして迎え入れることは容易な事業ではありません。
(鰍ャょうせい発行 山野幸吉著書の「沖縄返還ひとりごと」より)